レネットとミラベル四つの冒険

エリック・ロメールの「レネットとミラベル四つの冒険」が早稲田松竹でやるというので出かけてみた。 古い映画なのでスタンダードサイズ(4:3)でフランス語モノラルという視聴環境なんだけど。ちょっと昔のフィルムのザラつき感も良くて、これがすごく落…

万引き家族

話題の映画「万引き家族」の初日を見にtohoシネマズ新宿へ行った。 この映画を見て、なぜか日本の古代人のことが頭に浮かんできた。家族というコミュニティで力を合わせ、狩猟採集をやっていた人たちだ。 歴史の教科書で学んだとおりなら、縄文時代の終わり…

フロリダ・プロジェクト

傑作の呼び声も高い映画「フロリダ・プロジェクト」を見に新宿のバルト9へ出かけた。 フロリダの眩しい空の下で駆け回る子どもたちの躍動に感動させられると思いきや、、しばらくして、憂鬱な気持ちが襲ってきた。 アメリカで“プロジェクト”と言えば社会の…

レディ・バード

脚本家で女優としても活躍するクレタ・ガーウィックが自分自身の高校時代のことを映画化した作品「レディ・バード」を日比谷シャンテに見に行った。 冒頭こんな言葉から始まる。 Anybody who talks about California hedonism has never spent a Christmas i…

犬ヶ島

TOHOシネマズ六本木でウェス・アンダーソン監督のストップモーションアニメ作品「犬ヶ島」を初日に見に出かけた。 映像・グラフィックが愛くるしくて夢中にさせる。 犬の表情や動きのなんと素晴らしいことだろう。一見しただけでよく研究されていることがわ…

レディ・プレイヤー1

任天堂のファミリーコンピューターが我が家にやってきたのは僕が小学校2年生のときだった。ソフトは初期の「テニス」や「ゴルフ」など非常にシンプルなものから始まり、「ゼビウス」「マリオ」にも夢中になった。そういえば誕生日のプレゼントには「スパル…

「三度目の殺人」「彼女がその名を知らない鳥たち」

この二作品を観て、ここに出ている役者というのは芝居で食べているだけあってどの俳優も皆うまいもんだなあとあたりまえの感想を抱いて早稲田松竹の劇場を後にした。 「三度目」では咲江を演じていた広瀬すずが意外に存在感があって、もしかしたらこの娘が事…

代々木上原の幸福書房

代々木上原駅前の「幸福書房」は岩楯幸雄さんが家族経営で営む街の小さな本屋さんだ。 地元の人には親しみをこめて「幸福さん」と呼ばれている。 本が好きな僕は10年前にこの街へ越してきたときに自分の街に馴染みの本屋があることがうれしくて、以来仕事…

スリー・ビルボード

アメリカ映画にはいわゆる「ホワイト・トラッシュもの」というジャンルがあるようだ。ニューヨークやロスのように世界に開かれた大都会とは別次元の村社会が合衆国の中にはあって、南部や中西部ののどかな田舎街が舞台だったりして、美しい風景とは逆に、良…

希望のかなた

われわれ日本人、いや少なくとも僕は難民問題というとどこか対岸の火事のような気がして親身になって考えた経験がない。 アキ・カウリスマキの難民三部作の一つ「希望のかなた」を観に渋谷のユーロスペースへ出かけた。 内戦が激化するシリアから脱出してフ…

ノクターナル・アニマルズ

思春期・青年期を過ごして中年期に差し掛かると、特に女性なんかは何かを失ってきた喪失感が心の中を占領することがあるようだ。 いわゆる「もし、あのとき…」というやつだ。 トム・フォード監督の新作「ノクターナル・アニマルズ」は、この監督が得意とする…

女神の見えざる手

2020年オリンピックの開催地が東京に決定した時に、「ロビー活動」の成果ということが盛んに言われた。僕はそのとき初めて「ロビー活動」という言葉を聞いて、ホテルのロビーでこっそり袖の下でもやってそうで、宜しくないイメージを持ったが、何とアメ…

インターステラー

CGを使わず、フィルム撮影にこだわったというSF映画「インターステラー」がおもしろいという評判なので、木場の109シネマズへ出かけた。 異常気象や環境被害に伴い植物がほぼ絶滅し、厳しい食糧難に晒された近未来の地球。人類が滅亡へのカウントダウン…

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

芸術の道を志す者のなかにはほんの一握りの成功者とそれを裾野で支えているかのように日の目を見なかった者たちがいるのはこの世の常。だが、当人はみな必死にやっているので、本気で目指す以上、才能がなくて成功しないことはやはり惨めでつらい。 1961…

戦争のはらわた

子どもが物心ついたあたりで親から初めて教わるルールといったら「暴力はいけません」ということだろう。 十分わかっているつもりだ。しかし、では戦争はどう説明すればいいのだろう、何かを守るためなら相手を殺してもいいのだろうか。成長するに従って自問…

ベイビー・ドライバー

音楽のスイッチをオンにすると天才的なドライビングテクニックを発揮する通称ベイビーは、その才能を犯罪組織のボスに買われ強盗の逃がし屋で稼いでいる。ノリの良い音楽に合わせてアクセルを踏みハンドルを切るカーチェイスシーンが評判の「ベイビードライ…

パターソン

一般試写会の招待を頂いたので渋谷のユーロライブで「パターソン」を観てきた。 ニュージャージー州パターソンのバスの運転手で詩を書くことを愛好しているパターソン(主人公は住んでいる街と同じ名前なの)の一週間にわたる日常が描かれている。 妻と愛犬…

smokeーデジタルリマスター

デジタル・リマスタリングされた「smoke」を名画座のキネカ大森で観てきた。 この作品は90年代のニューヨーク・ブルックリンが舞台ということで、ブルックリンプロムナードを散歩するシーンでは、背後のマンハッタン島にちゃんとツインタワーが写っていて…

クレールの膝

有楽町の角川シネマでお待ちかねのエリック・ロメール監督の特集上映をやっていたので表題作を観てきた。 物語の舞台はスイス国境に近いフランスのアヌシー湖畔。 男は市街地の運河にボートを走らせ、川幅が徐々に広がりアルプス山系も望める湖畔の別荘へバ…

20センチュリー・ウーマン

すこし気恥ずかしい題名も観終わってみるとそのタイトルに込められた想いが染みてくる。 アネット・ベニング演じるドロシアは大恐慌時代に生まれ、ハンフリー・ボガードとジャズを愛し、四十代で息子を出産。振り返ればその人生は波乱に富んだ20世紀ととも…

天皇について考えてみた

第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 僕は子どもの頃、この条文を読んでまったく理解に苦しんだ。 ”象徴”と言ったら学校の校章とか会社のロゴマークのようなものを思い浮かべる(…

マンチェスター・バイ・ザ・シー

好きな映画のタイプで僕が密かにニューイングランド系と思っているものがある。ウッディ・アレン監督の「インテリア」を初めて観たときに、(すごい偏見なんだけど)アメリカ人というのは陽気なだけじゃないんだ、多かれ少なかれ心に葛藤を抱えているんだな…

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件

1991年に台湾の映画監督エドワード・ヤンが発表した表題作が今春デジタルリマスタリングされたということで、新宿の映画館へ出かけた。 上映時間が4時間もあるというと何やら苦行のような響きが漂うが、最後までまったく退屈しなかった。どのカットも惚…

わたしは、ダニエル・ブレイク

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の中でフードバンクの様子が出てくる。 フードバンクとは、前向きに生きる意欲があっても食べ物が手に入らない市民が、賞味期限寸前だったり少し傷が付いているだけで流通にまわせない食品を無償提供してもらえるシステ…

ラ・ラ・ランド

ミュージカルが嫌いな人は沢山いるが、その理由はピストルで撃たれて急に踊りだしたり、喜びの表現を一斉に皆で歌ったりすることが馬鹿馬鹿しいといったものだろう。 僕は舞台で本物のミュージカルを観たことがないから何とも言えないが、歌舞伎なんかも荒唐…

この世界の片隅に

始まってすぐに昭和初期の広島・呉にタイムトリップしてしまう。 映画「この世界の片隅に」を観ると、空襲の凄まじさ、防空壕の中の様子、市井の人々の日常の食糧事情や暮らしが覗ける。しかしその描写にはおどろおどろしい恐怖感はなく、どちらかと言えば戦…

厄年

帰省の折、諏訪大社にて父が一言「おまえは今年厄年じゃないか」とこぼした。 こうゆうことは知らなければ厄年じゃなかったのに、知ってしまった以上本年は僕にとって厄年になってしまった。 「あなたは今年災いがありますよ」と天から宣言されたようで何だ…

Happy Xmas (War Is Over)

明けましておめでとうございます。 今年の元日は東京の自宅でおせちを食べたり酒を飲んだりしてゆっくり過ごしました。 夜は専らラジオを聞いていたのですが、好きな音楽番組でジョン・レノンの有名な「Happy Xmas (War Is Over)」がかかりました。 あれ?正…

村上春樹とノーベル賞

毎年この時期が来るとイギリスの賭け屋によって、村上春樹さんが文学賞受賞の最有力であることが発表され、マスコミがその期待を煽り、村上ファンが中心となったカウントダウンイベントまでが報道されたりする。 業界が村上春樹さんに期待したい気持ちも、フ…

日々の光

何かにつけ、いまの時代は良くないとか、金が無いとか税金取りすぎだとか、ついつい文句が出てしまう今日このごろ。でもあの時代と比べたら今はずっといい時代なのだよと自分に言い聞かせている。すくなくとも自分の人生を国家の方針によって滅茶苦茶にされ…