あまちゃん

 何度も言うが僕はテレビを持ってないので、完全にあまちゃんに乗り遅れた。アルバイト先などでも「えっ。あまちゃん見てないの。見た方がいいよ」などと、見ている側からのプレッシャーが痛い。普段の僕ならここで頑として見ないのであるが、よく聴くTBSラジオでもニッポン放送でもJ-WAVEでも、愛読している週刊誌のコラムにも、新聞にさえも。連日「あまちゃん」という字を見ない日はない程のあまちゃんフィーバーである。ここまでくると、もしかして本当に面白いのかもという期待が脳裏をかすめる。ちょっと覗き見気分ででインターネットに動画がないか探して、ひどい画質のものだけど第1話から第5話までを視聴してみた。するとやはり本当におもしろかった。まだ5話までしか見ていないが、早くも好きなシーンがある。第5話の中で主人公のアキが海に飛び込むシーンだ。いじめられっ子で暗い感じだったアキが、自分を変えたいという気持ちで目の前の海に飛び込むのである。飛び込んだ瞬間、カメラは大きくバックして空と海と防波堤の水平線の図の中で空中に浮かんでいるアキを点として印象づけている。海から上がったアキは生まれたてのイルカような奇麗な声で母と祖母に向かってこう言った。「わたしあまさんになりたい」と。
 ここで、もしあのとき飛び込まなかったらどうなっていたかという仮説も、馬鹿げているけど一瞬だけ考えてみた。アキと母親は東京に帰っていつもの日々に戻っていき、北三陸の過疎もまあそれなりに楽しくも厳しい現実を迎えたと思う。
 しかし、アキは思い切って飛び込んだ。それによって「あまちゃん」の全ストーリーが動き出したのだ。「あまさんになりたい」という一人の少女のエネルギーがドラマの未来を切り開いた。

 ドラマを離れて、実際の人生でも同じこと。飛び込むべきときに飛び込まなければ運命は開かれないものだ。常日頃ぐうたら生きている僕は身につまされる。

 ちなみに「あまちゃん」は全156話の放映が既に終了しているけど、僕はまだ最終回まで見ていないので、これから少しずつ見ていこうと思ってます。