トーマス・デマンド展

よい天気の週末だった。午前中シーツなどを洗濯して外に干していると本当に幸せな気持ちになる。そんな気持ちのよい日には現代美術をゆっくりぼーっと見たりするのが理想的な過ごし方かもしれない。


木場にある東京都現代美術館でトーマス・デマンドという人の個展をやっている。チラシを見るとブルーのタイルのお風呂と白いカーテン、バスマットがよれているのが現実っぽいが、かなり計算されたペインティングのようにも見える。クールさと奇妙な温かみが同居している。なにやら面白そうだったのでふらっと出かけてみた。

東京都現代美術館は確か僕が高校生の頃できた比較的新しい美術館で、バブルもはじけちゃった後だったので、当初は相当にたたかれていたと記憶している。

こんな巨大な箱を造ってどうすんだとか、漫画みたいな絵に都民の税金を6億円も使ってけしからんとか、はては交通アクセスの悪さから東京都の粗大ゴミとまで言われていた。しかし、この交通アクセスの悪さでしかも万人受けしない現代美術を扱っていることも幸いしてかいつ行ってもすいている。都内にある他の美術館(上野方面や乃木坂方面)と違って宣伝も控えめな気がする。おかげでのんびりと過ごせるのでお気に入りの美術館だ。

さて、肝心のトーマス・デマンドだが、この人はどこにでもあるような日常風景(例えばオフィスやエスカレータなど)やみんなの記憶にあるような画像(情報)を紙を使って等身大に再構築して写真を撮るという手法。現代社会のスピード感とはまったく正反対の極めて非効率的なスタイルをとるドイツ出身の現代美術家だ。このデマンドの作品がとてもおもしろかった。一切の妥協のないつくり込みと写真のクウォリティーも見事だが、単に本物そっくりに紙でつくりましたというレベルを超えて、モノを見るということは一体どうゆうことなのかとか、今立っている現実世界もデマンドの作品世界もリアリティーというレベルでは同質なのでは、あるいはこの世界もまた、デマンドがつくった紙の世界なのかもしれないなどと哲学的な問答には入り込んでしまった。別に哲学的にならなくても「絵」として見てもかっこいいです。展示作品数が少なめなのが物足りないが、よい作品みたなという充実感がありました。オススメします。