文楽若手会

文楽の師匠からのお招きがあり、若手会を見に隼町に出かけた。
僕は文楽に関しては初心者で何もわかっていない。ほとんど唯一三番叟が好きで、あのダイナミックかつコミカルな感じが気に入っている。
文楽義太夫と三味線と人形の3つのパートで織りなす人形劇(人形劇でいいんですよね)で、僕が見たところこの3つはほぼ対等なので三味線は義太夫に会わせて絶妙にサポートしなくてはいけないし、義太夫も自分勝手に突っ走っては全てが台無しになる。人形もまたしかり、三味線と義太夫の伴奏に合った動きが求められる。個々の技術を高めるのと同時に全体の調子を合わせていかなくてはよい作品にならないのだ。これってなかなか世の中の縮図だなあと思う。

もう一つ面白ことに気がついた。

人形遣いはだいたい3人で一体を操っており、頭と右手を動かす主遣いと左手を動かす左遣い、足を動かす足遣いがいる。主遣い以外は全身真っ黒の黒衣である。文楽の師匠曰く、たくさん文楽を見ていると黒衣でもそれが誰だがわかってくるし黒衣だからこそ力量が必要なのだという。
なるほどと思った
黒衣など人形遣いは本来目立ってはいけない。だから舞台では極力自分の存在を消しているはずである。にもかかわらず存在がにじみ出てくるところが実に興味深い。
個性とは一体何なのかという日ごろの疑問に光が射した瞬間だ。