都会のコート

冬のコートは楽しい


 暖かさと軽さではダウンジャケットには及ばないが、都会の冬にはコートの方が似合うと思う。コートが醸し出す「哀しみ」のようなものがモノクロームの街に栄えるからだろう。鉛色の曇り空にむき出したプラタナスの並木路を歩くのはダウンジャケットではどうも絵にならない。

 コートの中でもピーコートとダッフルコートは若者らしくて好きだ。街でさらりと自然に着こなしている人に憧れる。この手のコートはを着こなすコツは自分の体に合った普通のデザインのものを清潔感のあるジーンズやスニーカーと合わせることだろう。間違っても変におしゃれに力を入れすぎたりしてはいけない。

 僕はオリーブグリーンの斜め綾ウール地のスポーツコート(スポーツ観戦するときに防寒用に着るフード付き膝丈タイプのデザイン)をもう20年くらい愛用している。これは高校に入学したころ祖母が買ってくれた大切なコートだ。甲府洋服屋をやっていた叔母が選んでくれて、値段は安くはないだろうが20年着ているので元は取った。袖の所などもう毛玉だらけでボロくなっているから新しいのに買い換えようと何度か思ったが、かたちが好きなので手放せない。軽くてどんな服の上からでも気負いなくバサッと羽織れるから、ちょっとそこまで行ってくるというような時にぴったりだ。反対に生地が薄くて若干風が通るという欠点もあるが、多少ダメな弟を可愛がるようにそんなところも気に入っている。