きっと、うまくいく

 世界最大の投資会社ゴールドマンサックスによると、2050年の各国GDP予測値は、1位は中国、2位は米国、そして3位がインドだという。ちなみに2013年現在のインドは10位ということだから、この数十年でインドは間違いなく国力を伸ばすだろう。
 先日、インドで記録的ヒットを飛ばした映画「きっと、うまくいく」を見てきた。
 同国のエリート工科大学ICEを舞台に、常に自由な発想で身の回りのモノで便利な発明をする工学の天才学生ランチョーを中心にルームメイトでランチョーを慕っているファランとラージューの“3バカ”が管理的な成績主義に反発してハチャメチャやる学園青春コメディだ。だがストーリーはそんなに単純ではない。その天才学生ランチョーが卒業後謎の失踪を遂げるのだ。映画が進行するにしたがってランチョーがなぜ消えたのか、そして次第に彼の正体が明かされていくというミステリー+ロードムービーの要素も入っているから面白い。
 卒業から10年後、同窓生で秀才だが教科書を丸暗記するようなタイプのサイレンサーが「ランチョーの居場所をつかんだ」という呼び掛けでファランとラージュが母校ICEに集い、これからランチョーを探す旅に出るとことから映画は始まる。
 教科書丸暗記のサイレンサーは卒業から10年後、ある大企業の副社長になっていた。誰もがうらやむような”成功”を手にしていたのだ。かつてライバル視していたランチョーと現在の自分、どちらが「勝ち組」かを比べてやろうという魂胆もあるのだ。

ところで、
 実際にインド工科大学とはここの受験で失敗した学生が米マサチューセッツ工科大学に入るという例があるほど超難関で、特にITに関しては世界最高峰の呼び声も高い。貧富の差が激しいこの国だが、近年最下層出身者でも学業に優れた者は無償で国立大学に入れるという素晴らしい制度が導入されている。この映画のなかでも貧しい学生は金持ちになって親を楽させたいので必死に勉強して大学入学をめざす。しかし折角入学しても一流企業への就職するためには、さらに多くの試験を優秀な成績でパスしなくてはならない。そのプレッシャーに耐え切れず、自殺してしまう若者も後を絶たないというのだ。そんな超学歴社会の現実の中で主人公のランチョーだけが、ちょっと待て、そうじゃないだろうと学校や社会に対して疑問を投げかけるのだ。彼だけが唯一、学問を純粋に愛し、工学に情熱を持っていたのだ。
ランチョーのこんなセリフが胸に響いた。
「おれがなぜ主席になれるのかって、それはおれの情熱が工学だからだ。」

 どの国も発展の礎は優れたエンジニアが支えているのだなと、この映画を見て改めて強く感じる。そう、かつての日本もおそらくそうだったはず。

 ランチョーは10年後、インドの信じられないくらい美しい自然の辺境に住んでいたのだが、どうなっていたかは驚きの結果が待っているので映画を見てのお楽しみ。

 冒頭の話に戻ろう。
2013年現在、GDPで世界第3位の位置にいるわが日本だが、これが2050年の予測値を見るとインド、ブラジル、等に抜かれて第8位、経済大国の座から陥落するといわれている。